
「経済は一流、政治は三流」
20年ほど前、日本はそう言われてきました。しかし今はどうでしょう。経済も政治も三流にまで落ち込んでしまっているのではないでしょうか。2010年度の日本の国家予算では、歳出92兆円に対し税収はわずか37兆円にすぎず、その差額55兆円は 国債発行、つまり借金で賄わざるを得ない状態です。総額924兆円にも上る大きな借金を抱えているにもかかわらず、ほとんどの日本人はのんきに暮らしています。年収の25倍もの借金を抱えている、これが個人の家庭ならとっくに破産宣告です。この大きなつけは、いずれ次世代を担う子供達の双肩に大きくのしかかっていくことは確実です。刻々と進む少子高齢化社会により社会保障費は年々増大し、減り続ける生産年齢人口の―人ひとりへの負担はますます大きくなってゆきます。GDP(国内総生産)もついに中国に追い越され、世界第3位に転落してしまいました。このままでは子供たちは、この国の将来に何の夢も希望も持てなくなってしまいます。
中国だけでなく、インド、ブラジルなどいずれ日本を追い越していくだろう国々は、資源も人も日本より遥かに恵まれています。資源の乏しい日本が、今後世界の中で生き残っていくためには、やはり優秀な人材を輩出してゆくしかありません。そのためにもこれからの日本では教育が最も重要な課題になってくるはずです。
しかし現状はどうでしょうか。「財団法人日本青少年研究所」が毎年発表する日本、米国、中国、韓国の4カ国の高校生の意識比較調査で、2007年4月には高校生の「意欲」に関する調査が発表されていました。
①生活意識
・日本「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたい」
・米国「一生に何回かはデカイことに挑戦してみたい」
・中国「やりたいことにいくら困難があっても挑戦してみたい」
・韓国「大きい組織の中で自分の力を発揮したい」
②偉くなることについて
・日本「責任が重くなる」「自分の時間がなくなる」
・米国「自分の能力をより発揮できる」「周りに尊敬される」
・中国「自分の能力をより発揮できる」「責任が重くなる」
・韓国「責任が重くなる」「自分の能力をより発揮できる」
③偉くなりたいか「偉くなりたいと思う」(「強くそう思う」)
・日本 8.0%
・米国22.3%
・中国34.4%
・韓国22.9%
長引く景気低迷の経済の中で、いつの間にか日本人はおとなも子供もすっかり元気を失ってしまったのでしょうか。子供たちについては、すべてが「ゆとり教育」のせいとは言えないかもしれませんが、影響がなかったとは決して言えないでしょう。文部科学省は「ゆとり教育」を元に戻そうと決断しましたが、長い空白の時間はしばらくの間尾を引くことになるでしょう。
暗いニユースの多かった昨年ですが、10月に伝えられた日本人科学者2人のノーベル化学賞受賞は大いに日本中を沸かせました。子供たちにも鈴木章、根岸英一両氏の言葉は大きな励みになったことでしょう。しかし日本中、本当に心から喜んでばかりいられるでしょうか。今回の受賞の対象となった研究はおよそ30年も前の研究業績だそうです。「これは日本人が過去に行った研究が素晴らしかったことは示唆するが、今後の研究レベルを保証するものではない。ノーベル賞は遅行指標であり、過去の結果を確認するに過ぎない」といった警鐘の声もあります。実際、今アメリカの主要大学で活躍する日本人研究者や留学生に比べ、中国・インド・韓国など他国の方が、人数の面でも実績の面でもはるかに上回っていることを考慮すれば、はたして50年、60年後に日本人のノーベル賞受賞者が現れるかどうか、はなはだ疑問と言わざるを得ません。
「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるかを思い知らされる。自分の無知に気付けば気付くほど、よりいっそう学びたくなる。」これはノーベル物理学賞受賞のアルバート・アインシュタインの言葉です。入試のためだけに学ぶのではなく、ただ知識を詰め込むだけではなく、自分自身の力で考えて解けたときの喜び、日標を掲げ努力してやり遂げたときの達成感、そんな学ぶことの本当の楽しさと感動を今年も子供たちと共に追い求めて行きたいと考えています。